THE INTERVIEWS

プログラミングはウェブ開発のごく一部に過ぎません。また、プログラミングのなかでウェブ開発に関係するのは一部です。〔これは現時点の話であって、いずれはあらゆるソフトウェアがウェブと無関係ではいられなくなり、ウェブ開発の範疇に入ってくるかもしれないと思います。余談でした〕

「ウェブ開発」という分野は模索中であり、まだ教科書は書かれていません。〔私自身がいずれ「ウェブ開発」の教科書を書きたい、というのはさておき〕

私自身が「ウェブ開発」のために学んでいることをあげておきます:人間中心デザイン、情報アーキテクチャ、ユーザーインタフェイス(UI)デザイン、ソフトウェア工学(開発プロセスとアーキテクチャ)、プログラミング、イノベーションとマネジメント(野中郁次郎やクレイトン・クリステンセン)、マーケティング、広告、ミクロ経済学、社会学、現代思想(情報社会論)…

ウェブ・アーキテクトは「ウェブ開発」の専門家でありながら、「ウェブ開発」に含まれる各専門分野の各専門家には適いません。そんな中途半端な「ウェブ・アーキテクト」なる存在にも、固有の役割があります。それは「ウェブ開発」における視野の広さです。一人のユーザーから社会まで、ミクロからマクロまでを視野に入れます。また、前述のように広範な専門分野について「広く浅く」知っています。〔さらには、すべての「専門分野」に通じる「根っこ」としての思想を持ち、そのうえで他人の思想を理解・尊重する力も大事です〕

ウェブ・アーキテクトは、個別のプロジェクトに必要なスキルやスタッフの適切な選定ができます。さらに、異分野の専門家同士がよい形で共同作業できるような場を作ります。ウェブ業界では「エンジニアとデザイナの対立」がよく語られますが、その対立を超えるためにウェブ・アーキテクトが働きます。

ウェブ・アーキテクトはウェブ開発の「全体性 wholeness 」を追求します。様々な専門家が単に集まっただけでは「全体性」がおろそかになります。そこにウェブ・アーキテクトという「専門家」の存在意義があるのです。ウェブ・アーキテクトはウェブ開発の外から見れば「ウェブ開発の専門家 specialist」ですが、ウェブ開発の内部では「ゼネラリスト generalist」として働きます。

もしあなたがゼネラリストとしての「ウェブ・アーキテクト」になる(または「である」)ならば、私の「広く浅い」学び方が参考になるかもしれません。さもなくば個別の専門分野における専門家の「狭く深い」学び方を参考にしてください。あなたが「何をどう学ぶのか」は、あなたが「何者になりたいのか」によって決めるのが妥当であるはずです。

余談ですが、「私自身が『ウェブ開発』のために学んでいること」と書きました。ウェブ開発〈のために〉学ぶということは、ウェブ開発〈それ自体〉を学んでいるわけではありません。つまり「ウェブ開発」独自の言説が、まだ少ないということです。ティム・オライリーの「Web 2.0」や、梅田望夫の「ウェブ進化論」は、「ウェブ開発」独自の言説です。しかし、そういった言説がまだまだ少ない。「ウェブ開発」が独自の言説を確立しなければ「人々がウェブ開発〈それ自体〉を学ぶ」ことは難しい、と私は考えています。その意味で、冒頭で述べた通り:

「ウェブ開発」という分野は模索中であり、まだ教科書は書かれていません。〔私自身がいずれ「ウェブ開発」の教科書を書きたい、というのはさておき〕(※再掲)

とはいえ「教科書」という教育手段にも限界があります。ウェブ・アーキテクトにとっては、座学や教科書で学べる「形式知」よりも、実践的に体得しなければならない「暗黙知」のほうが大事だと思っています。一人前のウェブ・アーキテクトを育てるには、座学だけではなく実践(OJT)の量が必要です。結局、学校で学生相手に講義するより、弟子を取って自分の仕事のなかで育てることを私は選ぶでしょう。

関連:コンピュータ(プログラミング)について学びたいとき、大学ではどのような学部・学科に入るべきでしょうか?
http://theinterviews.jp/zerobase/171861

2011-09-06 13:32:36